先月はハロウィンにまつわる投稿をしたので、少し気が早いがこんどは「11月30日」のことを少し書こうと思う。

1611年11月30日、測量のため三陸沿岸を北上していたスペインの航海士セバスティアン・ビスカイノが盛浦(現在の大船渡湾)に停泊した。この日はキリスト教の暦で聖アンデレの日にあたることから、彼は大船渡湾を「サンアンドレス湾」と名付けた。世界中の資源や交易ルートを求めてヨーロッパ諸国が熾烈な競争を繰り広げていた頃、一瞬ではあるけど三陸海岸にもその視線が向けられたというのは、べつにめでたいことでもないかもしれませんが、どこか空想を掻き立てる出来事た。

さて、聖アンデレの日(セントアンドリュースデイ)と言えば、スコットランドの記念日でもある。スコットランド国旗のソルタイア(斜め十字)は聖アンデレが殉教した際に架けられた十字架の形。スコットランドの守護聖人となっているのは、聖アンデレの遺体の一部が持ち込まれ、祀られていることや、9世紀にスコットランドの先住民族ピクト人の王であったエンガス二世が聖アンデレを崇敬したことに由来するとのこと。

ビスカイノの時代からしばらく経った1698年、スコットランドでは、大航海時代の表舞台に躍り出る為に、中米のダリエン地峡に植民地を建設するという大計画が実行に移されようとしていた。中心人物はイングランド銀行の創始者のひとりでもあったウィリアム・パターソン。この入植地は(ニュー)カレドニア、拠点はニューエディンバラと名付けられた。当時スペインは、現在のメキシコを経由して、アジアとの交易を行うことができた。ビスカイノや支倉常長が利用したのもこのルート。スコットランドはダリエンを拠点として、同じルートでアジアと結ばれることを夢見たのだ。

ところが、この(ニュー)カレドニアは既にアメリカ大陸に勢力を築いていたスペインと対立し、イングランドから見放され、さまざまな困難に見舞われた挙句、たった2年後に滅びてしまった。ニューカレドニアという名は、後に直接関係のないポリネシアの島々に付けられることになる。追いやられた植民者のほとんどは無事に帰国することすら叶わなかったという。また、スコットランドの貴族や地主層は、この計画に投じられた莫大な資金を回収できなかったせいで困窮し、1707年にイングランドと連合せざるを得なくなるという結末を招いたとも言われる。今日も歌い継がれる”Parcel of Rogues(悪漢ども)”という歌には、この時「金で祖国を売った」人々への怒りが語られている。その非難の矛先は、原因となる大風呂敷を広げた人々にも向けられているのかもしれない。

同じ頃、日本は鎖国の真っ只中で、1673年にはイングランドの商船を拒んだ「リターン号事件」が起きている。だけども、そんな最中の1709年に日本を訪れた著名な英国人がいた。レミュエル・ガリヴァー、『ガリヴァー旅行記』の主人公だ。1706年に太平洋を航海していたガリヴァーは海賊に捕らえられるが、身ひとつで放り出されたところを「空飛ぶ島」の住民に救われ、日本の東方にあった奇妙な国々を見聞した。その後、オランダ商人であると偽って日本に上陸し、オランダを経由して母国イングランドへと帰国した。

Wiki Loves Jules Verne Swift Gullivers Reisen Gelehrteninsel Laputa 1839 (Gerd Kueveler)

ところで、11月30日は『ガリヴァー旅行記』の作者ジョナサン・スウィフト(1667-1745)の誕生日でもある。過激なブラックユーモアで連合王国の支配層(時には全人類)を風刺・批判した皮肉屋として有名なスウィフトは、イングランドにルーツがあり(国教会の)聖パトリック大聖堂の首席司祭を務めたエリートだったが、土着のアイルランド人社会とも接点を持ち、作品を通じてその立場を代弁することもあった。また、スウィフトは同時代人であった吟遊詩人ターロック・オカロラン(1670-1738)とも会っていたという。オカロランの”O’Rourke’s Feast”という曲は、ヒュー・マゴーランという詩人が書いたアイルランド語の詞に乗せたものだが、スウィフトはこの詞の英訳を残している。

スウィフトが描いたような遠い不思議な世界を、オカロランが夢想することがあったかどうかはわからないが、空を飛ぶ島があったり不死身の人がいたりするような空想の国々と隣り合わせの土地で、彼の曲を演奏しているのはなんとなく愉快なものだ。

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